数字で見るサイクルロードレース

主にWTの自転車レースを数字で読み解く。

数字で見るシーズン序盤振り返り・それぞれの課題点 その1

リエージュ~バストーニュ~リエージュは、クイックステップのボブ・ユンゲルスの勝利で幕を閉じた。

そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュの終了はクラシックシーズンの終了を意味する。

 

これからはステージレース。そしてジロ・デ・イタリアの開幕も近い。

 

今回は、UCIポイントランキングを参考に、各チームのシーズン序盤の振り返りを行っていく。

まずは1位から6位までだ。

 

なおポイントはリエージュ~バストーニュリエージュ終了時点のもの。

 

 

 

1.Quick-Step Floors  

Points:6927

 

勝利レース

1.ツアー・ダウンアンダー(2.UWT)St.3 エリア・ヴィヴィアーニ

2.ブエルタ・サン・フアン(2.1)St.1 フェルンナンド・ガビリア

3.ブエルタ・サン・フアン(2.1)St.4 アリエル・リケーゼ

4.コロンビア・オロ・イ・パス(2.1)St.1 フェルナンド・ガビリア

5.コロンビア・オロ・イ・パス(2.1)St.2 フェルナンド・ガビリア

6.コロンビア・オロ・イ・パス(2.1)St.3 フェルナンド・ガビリア

7.コロンビア・オロ・イ・パス(2.1)St.4 ジュリアン・アラフィリップ

8.ドバイツアー(2.HC)St.2 エリア・ヴィヴィアーニ

9.ドバイツアー(2.HC)St.5 エリア・ヴィヴィアーニ

10.ドバイツアー(2.HC)総合 エリア・ヴィヴィアーニ

11.アブダビツアー(2.UWT)St.2 エリア・ヴィヴィアーニ

12.ル・サミン(2.1) ニキ・テルプストラ

13.ドワーズ・ドール・ウエスト・フラーンデレン(2.1) レミ・カヴァーニャ

14.ノケレ・クルス(1.HC) ファビオ・ヤコブセン

15.ハンドザーメ・クラシック(1.HC) アルバロ・オデッグ

16.ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.UWT)St.1 アルバロ・オデッグ

17.ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.UWT)St.6 マキシミリアン・シャフマン

18.デパンネ三日間(1.HC) エリア・ヴィヴィアーニ

19.レコードバンク・E3・ハーレルベーケ(1.UWT) ニキ・テルプストラ

20.ドワーズ・ドール・フラーンデレン(1.UWT) イヴ・ランパールト

21.ロンド・ファン・フーランデレン(1.UWT) ニキ・テルプストラ

22.イツーリア・バスク・カントリー(2.UWT) ジュリアン・アラフィリップ

23.イツーリア・バスク・カントリー(2.UWT) ジュリアン・アラフィリップ

24.イツーリア・バスク・カントリー(2.UWT) エンリック・マス

25.スヘルデプライス(1.HC) ファビオ・ヤコブセン

26.フレッシュ・ワロンヌ(1.UWT) ジュリアン・アラフィリップ

27.リエージュ~バストーニュ~リエージュ(1.UWT) ボブ・ユンゲルス

 

 

こうやって勝利レースを書き出すだけでも長いほど、去年同様圧倒的なスタートを切ったのがクイックステップだ。なんと二位のミッチェルトン・スコットに対して2800ポイント強の差をつけている。

去年のこの時点での勝利数は24と既に上回っている。しかも今年はクラシック最強軍団の名に劣らないクラシック勝利数を誇る。

 

何と言っても北のクラシックで勝利を重ねることができたのが大きい。

その要因となったのはもちろんロンド、E3勝利のニキ・テルプストラの強さもさることながら、チーム全体のクラシック班の質の高さと言えるだろう。

 

レース中盤、他のチームがアシストを二枚ほどに減らしている中で三枚以上残しているクイックステップ。そして終盤にも二枚は確実に残している安定感。

質の高さによる数の強さ。去年は生かしきれなかった部分を今年は存分に生かし切った。

 

 

ここまで書いたクラシック班の活躍は注目されがちだが、今年も十分にスプリンターが勝利を挙げている。

エリア・ヴィヴィアーニとフェルナンド・ガビリアだけで10勝。

ガビリアはティレーノ~アドリアティコでの落車からかなりの間レースから離れていたことを見てもスプリンターチームクイックステップここにありという勝利数だ。

 

それではここからのステージレースシーズンはどうなるだろうか。

 

ダニエル・マーティンの移籍により、山岳系ステージレースで総合を狙える選手がほとんどいなくなってしまった。

ジュリアン・アラフィリップは未だに健在なものの、長い登坂では今シーズンも遅れを見せている。

 

となるとやはりスプリントステージでの勝利だといえるだろう。

ヴィヴィアーニとガビリア。まともなスプリントでは今シーズン負けることのほうが珍しい二人が、どれほどの爆発力を見せるか注目だ。

 

・今後の課題点

 

特になし。陣容を考えてもここから失速は免れないが、スプリントでの十分な勝利数が期待できる。

 

 

 

 

2.Mitchelton-Scott

Points:4052

 

勝利レース

1.ツアー・ダウンアンダー(2.UWT)St.2 カレブ・ユアン

2.ツアー・ダウンアンダー(2.UWT)総合 ダリル・インピー

3.ヘラルド・サンツアー(2.1)St.3 エステバン・チャベス

4.ヘラルド・サンツアー(2.1)総合 エステバン・チャベス

5.クラシカ・デ・アルメリア(1.HC) カレブ・ユアン

6.パリ~ニース(2.UWT)St.7 サイモン・イェーツ

7.ティレーノ~アドリアティコ(2.UWT)St.5 アダム・イェーツ

8.ボルタ・シクリスタ・カタルーニャ(2.UWT)St.7 サイモン・イェーツ

 

 

個人的には意外な二位。

何といってもツアー・ダウンアンダーでのダリル・インピーの総合優勝が大きいか。

去年に比べるとどうしてもカレブ・ユアンの勝利の少なさが目に付くが、ユアンは今様々な条件に対応するための変化を行っている。

ミラノ~サンレモで二位に入ったのがその証拠だ。

 

そしてチャベスとイェーツ兄弟によるステージ勝利と総合。

大事なところでの遅れは目立つものの、UWTクラスのレースでここまでの勝利数を重ねられていることは大きい。

 

逆に言えば、クラシック班やパンチャー系の選手があまり勝つことができなかった。

クロイツゲルやアルバジーニなど、十分に勝利を狙える選手が揃っていたものの、もうひと伸びに欠けていた。(それでもアムステル二位、ワロンヌ四位は十分な成績と言えるが)

 

 

・今後の課題点

 

課題となるのはグランツールや中規模ステージレースでの総合優勝狙いだ。

 

チャベスとイェーツ兄弟。

登坂力で言えば十分に総合を狙える選手なのだが、どうしてもTTの遅さが目に付く。

ポディウムや上位には上がってくるものの、総合優勝には届かないというのがここまでのところだ。

そこを改善してビッグレースでの勝利なるか。

 

 

3.BORA-hansgrohe

Points:3997

 

勝利レース

1.ツアー・ダウンアンダー(2.UWT)St.4 ペーター・サガン

2.カテル・エヴァンス・グレイトオーシャンレース(1.UWT) ジェイ・マッカーシー

3.ヘント~ウェヴェルヘム(1.UWT) ペーター・サガン

4.イツーリア・バスク・カントリー(2.UWT)St.3 ジェイ・マッカーシー

5.パリ~ルーベ(1.UWT) ペーター・サガン

 

 

 

見ての通り、勝利はジェイ・マッカーシーペーター・サガンのみ。

去年は個人の力が強いチームだという印象はあったが、今年はしっかりアシストが機能しているというのが大きな点だろう。

 

特にパリ~ルーベでのユライ・サガンやマルカス・ブルグハートの活躍は見逃せない。

 

そしてサガンの活躍に目を取られがちだが、ジェイ・マッカーシーの躍進も目を見張るものがある。

去年未勝利から一気に今シーズン二勝。そしてどちらともUWTクラス。

ジェイ・マッカーシー本人としても最高のスタートを切れたといえるだろう。

 

 

・今後の課題点

 

課題は何と言ってもこの二人以外の勝利がないという点だ。

 

ここからのステージレースシーズンは、チームとしての力が今まで以上に重要になる。

未だに今シーズン未勝利のラファル・マイカサム・ベネット。チームに勢いを与えるとするならばこの二人になってくる。

 

さらに、去年はまさかの失格により逃したサガンのマイヨヴェール獲得も大きな目標になってくるだろう。

今年のツールは厳しい山岳ステージも多い。ブエルタのポイント賞のような事態になる可能性も踏まえると、より一層アシスト陣の力が必要になってくるはずだ。

 

 

 

4.Movistar Team

Points:3887

 

勝利レース

1.ボルタ・ア・バレンシアナ(2.1)St.2 アレハンドロ・バルベルデ

2.ボルタ・ア・バレンシアナ(2.1)St.4 アレハンドロ・バルベルデ

3.ボルタ・ア・バレンシアナ(2.1)総合 アレハンドロ・バルベルデ

4.コロンビア・オロ・イ・パス(2.1)St.6 ダイヤー・キンタナ

5.アブダビツアー(2.UWT)St.5 アレハンドロ・バルベルデ

6.アブダビツアー(2.UWT)総合 アレハンドロ・バルベルデ

7.ティレーノ~アドリアティコ(2.UWT)St.4 ミケル・ランダ

8.パリ~ニース(2.UWT)総合 マルク・ソレル

9.ボルタ・シクリスタ・カタルーニャ(2.UWT)St.2 アレハンドロ・バルベルデ

10.ボルタ・シクリスタ・カタルーニャ(2.UWT)St.4 アレハンドロ・バルベルデ

11.ボルタ・シクリスタ・カタルーニャ(2.UWT)総合 アレハンドロ・バルベルデ

12.グラン・プレミオ・ミゲル・インデュライン(1.1) アレハンドロ・バルベルデ

13.クラシカ・プリマヴェーラ・デ・アモレビエータ(1.1) アンドレ・アマドール

14.ブエルタカスティーリャ・イ・レオン(2.1)St.1カルロス・バルベロ

 

 

アレハンドロ・バルベルデ

未だに衰えを見せない38歳が今年も爆発している。

脚質バルベルデと称されるそのオールラウンダーな脚質を生かして、ステージレースでの勝利を量産。チームとしては十分な立ち上がりに見える。

 

しかし、HC以上のワンデーレースの勝利がなかったのが唯一の心残りだろう。

 

特にフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュでのバルベルデ

他の動きに翻弄されアシストを多く残すことができず、去年までの圧倒的な強さを今年は見せることができなかった。

 

とはいえ、このチームの勝負所はここからだ。

 

 

・今後の課題点

 

何と言っても、トリプルエースで挑むグランツールだ。

ランダ、バルベルデ、キンタナは過去最強の三人だと言っていい。

 

しかし、この三人や新星マルク・ソレルを生かして圧倒的な強さを発揮できるか?と言われるとちょっと首を傾げざるを得ない。

 

恐らくこの三人が最大の目標にしているのはツール・ド・フランスだろう。

そのツール・ド・フランスにはモビスターにとって大きな壁が存在する。

 

35kmにも及ぶ、TTTだ。

 

最強に見えるこのトリプルエース、弱点が一つ。TT能力が低いという点だ。

バルベルデはともかく、キンタナとランダ。

 

例えば去年のブエルタでのヴィンチェンツォ・ニバリのように、フルームなどの圧倒的なTT選手に対してある程度抑えられるのであればまだいい。

 

この二人は抑えることはおろか、大きく広げてしまう可能性すら存在している。

 

TTというのは距離が長くなるほど選手によっての差が大きくなる。

そしてTTTはチーム全体のペースに合わせて走らなければならない。

 

さらに、エースは"絶対に"置いていけない。

どういうことかと言うと、ランダやキンタナのペースにバルベルデもろとも引きずられる可能性があるということだ。

 

 

これが三週目のエースが確定している状態ならまだいい。

このTTは最初の総合争いだ。三人の山岳での走りの調子もわからないままでエースを切り離すことはまず難しいだろう。

 

エースの数を増やすというのは一見有効に見えて、逆効果になる危険性も存在している。

TTTでどれだけタイムを抑えて、三人全員を生かせる状態に持っていけるかが勝負の分かれ目だ。

 

 

 

 

 

5.Bahrain Merida Pro Cycling Team

Points:3355

 

勝利レース

1.ドバイツアー(2.HC)St.4 ソニー・コルブレッリ

2.GP インダストリア&アルティジアナート(1.HC) マテイ・モホリッチ

3.ミラノ~サンレモ(1.UWT) ヴィンチェンツォ・ニバリ

4.ツアー・オブ・クロアチア(2.HC)St.1 ニコーロ・ボニファッツィオ

5.ツアー・オブ・クロアチア(2.HC)St.3 カンスタンティン・シウトソウ

6.ツアー・オブ・クロアチア(2.HC)St.5 マニュエレ・ボアロ

7.ツアー・オブ・クロアチア(2.HC)総合 カンスタンティン・シウトソウ

8.ツアー・オブ・ジ・アルプス(2.HC)St.5 マーク・パデュン

 

 

 

今年、大躍進を遂げたチームの一つと言っても過言ではないのだろうか。

去年の最終UCIポイントランキングは十四位。

それもブエルタイル・ロンバルディアでのヴィンチェンツォ・ニバリの走りあってこそだ。

 

それが今年はすでに五位。

ミラノ~サンレモでのヴィンチェンツォ・ニバリの勝利がチームに勢いをつけた。

そして勝利選手を見てみると、ヴィンチェンツォ・ニバリとソニー・コルブレッリの二人が目立った昨シーズンとは違い、シウトソウを除けば全員違う選手が勝っている。

 

 

全体の勝利数で見てみるとつい最近のクロアチアでの大活躍が目に付くが、

パリ~ニースやバスクでのイザギーレ兄弟や、アルデンヌクラシックでのガスパロットの走り。

トップ10に入ったレースを見てみると、意外にもかなりの数がある。

 

かなりのメンバーで挑んだアルデンヌクラシックでの勝利はなかったものの、創立二年目のチームとして考えるとかなりの躍進だ。

 

 

・今後の課題点

 

今後はやはりツールに絞ったヴィンチェンツォ・ニバリのアシスト。

 

とはいえ、十分に強力なアシスト陣が揃っているだろう。

イザギーレ兄弟に移籍してきたポッツォヴィーヴォ、ブエルタで好アシストを見せたペリッツォッティ。

 

このメンバーだけ見ればチームスカイにも劣らない山岳アシスト陣営だ。

そしてTT能力も十分と言える。

 

 

少し気にかかるのは石畳のアシストか。

現状北のクラシックで上位に残ったハウッスラーかコルブレッリあたりがアシストに入ってくることが予想されるが、ニバリが他の総合系選手に対して大きなアドバンテージを持っているのがこの石畳。ここでのアシスト陣の活躍が総合を分けるといっても過言ではないだろう。

 

 

 

6.BMC Racing Team

Points:3219

 

勝利レース

1.ツアー・ダウンアンダー(2.UWT)St.5 リッチー・ポート

2.ボルタ・ア・バレンシアナ(2.1)St.5 ヤーゲン・ルーラン

3.ツアー・オブ・オマーン(2.HC)St.3 フレッフ・ヴァンアーヴェルマート

4.アブダビツアー(2.UWT)St.4(ITT) ローハン・デニス

5.ティレーノ~アドリアティコSt.1(TTT)

6.ティレーノ~アドリアティコSt.7(ITT) ローハン・デニス

 

 

 BMCは六位に入っているものの、スタートダッシュとしては満足ではないといえるだろう。

理由は間違いなく、フレッフ・ヴァンアーヴェルマートのクラシックでの不調。

去年の成績を考えるとここで良いスタートダッシュを切っておきたかったところだ。

 

しかし、TTでの強さは未だ健在。

今シーズンTT4戦3勝(NC含む)のローハン・デニスや、ティレーノ~アドリアティコでのTTTの勝利。ここからのステージレースシーズンでもその強さを発揮すると思われる。

 

 

・今後の課題点

 

ステージレースシーズン、今年も注目はリッチー・ポートだ。

 

復帰戦ダウンアンダーではコンマ差の総合二位。

確実に調子は取り戻している。

 

少し気にかかることと言えば、安定感。

リッチー・ポートはグランツールライダーとしては2016年から走っているが、逆に言えば、二年間しか積めていない。

 

ここまでのポートのグランツールの走りで目に付くのは、バッドデーでの異常な遅れだ。

グランツールは三週間という長さがあるため、どんな選手でも大体一日はバッドデーが存在する。

 

グランツールライダーはいかにしてそこでタイムを抑えるかが大事になってくる。

フルームなんかは去年のブエルタのバッドデーは上手く抑えることには成功していた。(元々のタイム差はあったが)

 

だが、リッチー・ポートはバッドデーでの遅れがあまりにも大きすぎるのだ。

最近だとイツーリア・バスク・カントリーがそれにあたる。

この時は調整段階であるのは間違いないだろうが、それでも7分遅れは総合系にとって致命的すぎる。

 

山岳チーム力に関しては物足りないといえるが、それ以上にポート個人の調子の安定感が大事になってくるだろう。

 

 

 

今回は一位から六位までを紹介した。

 

次回をやるかは未定。

思ったより勝利レースを書き出すのが面倒くさかった。