数字で見るサイクルロードレース

主にWTの自転車レースを数字で読み解く。

数字で見る(?)ミラノ~サンレモ 機材選択の重要性

5大クラシックレース『モニュメント』。

その一戦目であるミラノ~サンレモが開催された。

 

内容はハイライト動画などが後々上がると思うので、そちらを参照していただければ。

 

 

勝者は、ヴィンチェンツォ・ニバリ(TBM)。

去年のイル・ロンバルディアに続いて年跨ぎのモニュメント二連勝を飾った。

 

展開を簡単に説明すると、260km辺りまでは特に大きな動きはない。

これは例年通りだ。

 

問題は、266kmからのチプレッサの登りと、それを下ってからのもう一度プッジオの登り、そして下って2kmほどの平坦。

 

例年通りであれば、このチプレッサの登りからパンチャーのアタック、それもややクライマー寄りのパンチャーのアタックにより、集団は活性化する。

それにつき切れなかったスプリンターが脱落し、パンチャーによる終盤になる。

 

ただ今年は違った。

 

チプレッサの登りにおいて、FDJが強力な牽引。

ルノー・デマールの登り切れる適切なペースでの完璧な牽引だった。

例年であればここで仕掛けていたはずのヴィンチェンツォ・ニバリや、LL・サンチェスなどはその牽引からアタックをすることができなかった。

 

しかし、このニバリの判断はのちの展開を大きく変える。

 

FDJがコントロールするまま平坦区間、そしてプッジオの登りに突入する。

この時点で大半のスプリンターは残っており、誰もがスプリントフィニッシュを予想した。

 

 

この展開に黙っていないのがボーラ・ハンスグローエである。

ペーター・サガンはスプリンターではあるものの、集団スプリントフィニッシュとなったときに不安要素が多すぎるのだ。

ボーラはここまでの集団のコントロールでアシストを減らし、さらにはカレブ・ユアンやアルノー・デマールなどの強力なスプリンター、さらにはその発射台までもがしっかりと集団に残っていた。

 

それを看過できないボーラは、ブルグハートのアタックを利用して集団のペースをアップさせようと考える。

さらに、ヴァンアーベルマート擁するBMCのドラッカーも同様の理由でアタックする。

 

ブルグハートが吸収され、ドラッカーがアタックしたそのタイミング、カウンターとして逃げるには絶好のタイミングでアタックしたのが、ニバリである。

 

実はニバリ、例年チプレッサの登りでアタックしては、平坦区間で吸収されるということが続いていた。

その経験を生かして、今度はプッジオでアタックを仕掛けたのだ。

 

 

下りの名手でもあるニバリ。それを追いたい集団だが、けん制する形となってしまう。

その要因が、集団に残っていたソニー・コルブレッリだ。

 

 

元々スプリンターとしてバーレーンメリダに入ったが、徐々にそのワンデーレーサーとしての才能を開花させる。

WTクラスのワンデーレースでの大きな勝利こそ挙がっていないものの、数多く上位に残ってきた。それはミラノ~サンレモでも同様だ。

 

去年、ペーター・サガンのアタックに誰よりも早く反応したのはこのコルブレッリである。

このニバリのアタックに対して足を使ってしまうということは、コルブレッリに対して有利に働くということでもある。

 

そして、その時先頭にいたボーラ、スカイはアシストが少ない状況。

さらに言えば、チプレッサの登りで誰もアタックしなかったことにより、スプリントフィニッシュの可能性が出てきていた。

その展開においても、バーレーンメリダは発射台を一枚、そしてコルブレッリを残してしっかり順応できるようにしていた。

 

まさに、完璧なタイミングでニバリはアタックしたのだ。

 

 

さて、数字で見ていくのはここからだ。

まずはこちらの記事を見てほしい。

 

bikenewsmag.com

私がよく見るブログ、bikenewsmagより引用させてもらった。

ここには、エアロロードバイクヒルクライム用の軽量バイクの差について書かれている。

 

今回取り上げるのは重量の問題ではなく、エアロの問題である。

 

今まで、エアロロードバイクには様々な議論が交わされてきた。

果たしてエアロロードバイクは重量を捨てるほどのエアロ性能はあるのか?ということである。

 

結論から言うと、あった。

 

で、メリダはこの時のニバリの下りについて、実際乗ってたSculturaではなく同社のエアロロードバイクReactoならばどうなるかを計算した。

 すると、20秒の短縮が可能となった。つまり、17分15秒→16分55秒で下れると。キンタナからさらに20秒のボーナスを削れると。

 

エアロロードバイクというのは、特に下りや平坦で大きな力を発揮する。

この時ニバリが山岳バイクであるSculturaに乗っていたのかは不明だが、のちのレースをいくつか見てもわかるように、ニバリはSculturaを愛用している。

 

もっと言えば、私は2017年シーズンのニバリをよく見ていたつもりだが、メリダのエアロロードバイク、Reactoに乗っているのを見たのは一度もない。

 

それはやはり、フィーリングの問題でもあるのだと思う。

 

 

今回のミラノ~サンレモ、ニバリが乗っていたのは、Reactoだった。

そして、下りや平坦でその力を発揮し、逃げ切ることに成功した。

 

これはメリダのエアロロードバイクが素晴らしいという話をしているわけではない。

 

はっきり言って私はこのミラノ~サンレモにおいてニバリがReactoを選択していなかったら、逃げ切ることはできていなかったように感じた。

 

なぜニバリが勝つことが出来たか?

その要因は、ニバリの機材選択にもあったのだと思う。

 

 

機材選択でそこまでの差がつくか?と思われるかもしれないが、実際にある。

2016年、人々の記憶に残るフルームのダウンヒルアタックでは、フロントの歯数を52-36から54-36に変更していた。

 

 

今年のミラノ~サンレモというレース、私はそこにロードレースの奥深さを感じた。

先述した随所随所の判断や、展開の移り変わり。

それだけではなく、機材選択というところもレースの勝敗を分ける。

 

2018年最初のモニュメントでここまでのレースが見れたのは幸先が良い。

今後のクラシックシーズン、さらに期待できると言えよう。